宮城のお盆にはおくずかけ(すっぽこ汁)
カテゴリー: 料理:穀・粉類
お盆も過ぎてしまってからのアップで恐縮ですが、宮城のお盆のお供え料理になくてならないのが、先日ご紹介したずんだ餅と今回のおくずかけ(おくずがけ)です。
おくずかけは野菜の細々を干し椎茸のダシで煮て醤油で調味した後、葛(片栗粉)でとろみをつけた汁物ですが、これについてもあれこれ愚考してみました。例によってお急ぎの方は飛ばして下さい。
宮城のお盆やお彼岸に付き物のおくずかけを仙台の北の地域ではすっぽこ汁と呼ぶそうです。初めて聞いた時、お盆の料理なのにおだった(ふざけた)名前だなぁと思ってしまいました。何と言うんでしょう、すっぽんぽんとかすっとこどっこいとかを連想して力が抜けてしまいますよね。^^
ある時、みちのくでは「し」を訛って「す」と発音するので、もしかしたら語源はすっぽこ→しっぽこ→しっぽくではないかと思いつきました。しっぽくとは卓袱料理のしっぽくで、江戸時代に中国から長崎経由で広まった円卓を囲んで食べる大皿料理のことです。
時間の経過とともに料理は日本風にアレンジされ、円卓も畳の上に置ける卓袱台(ちゃぶ台)まで作られました。星一徹がひっくり返すあれですね。今、書いていて気付いたのですが、ちゃぶ台はしっぽく台って書くんですね。
そこで、卓袱関係を調べていくと、卓袱うどんというのが西日本や山形にあるそうです。確かどこかの蕎麦屋でしっぽくというのを見た記憶があるのですが、場所が思い出されません。ともかく京都の卓袱うどんはただのあんかけうどんのことですが、讃岐だと数種類の野菜を煮込んだ汁をかけて食べるうどんです。この両者の特徴を持つのが宮城のすっぽこ汁と見なせます。
さらに山形のしっぽくうどんを調べると、なんと、山形市内では具沢山のあんかけうどんのことをすっぽこうどんといい、お店によってはしっぽこなどとも呼ばれているそうです。さらに驚いたのは、山形にはすっぽこ研究所というすっぽこに関する情報の収集・発信をしているブログまで発見してしまいました。
これらを総合すると、やはり宮城のすっぽこ汁のご先祖は山形経由で西日本から、そしてその名称は長崎を通じて中国から伝わって来たものであろうと推察されます。でも、なぜ宮城では汁物なのか、そしておくずかけという呼び名と同居しているのか?がよくわかりません。
もしかすると、仏事に供する料理なので別ルートから精進料理やその系統である普茶料理として伝わり、それがおくずかけとして定着した後に山形のすっぽこうどんがやってきて、見た目が似ているのですっぽこ汁と呼ぶようになったのかも知れません。
さて、おくずかけの作り方ですが、これは家庭料理なので家庭ごとに伝わるレシピがあります。ですが、原則として精進なので動物は入れません。干し椎茸のダシで、人参、大根、ジャガイモ、油揚げ、豆腐、豆麩等を煮込むのが普通で、これにきのこ類やインゲン、ゴボウ、糸蒟蒻などを入れる家庭もあります。
これらをやや小さめの賽の目に切っておきます。ナスだけは色が出る
ので皮を剥き、水で晒しました。
これらを煮えにくい物からダシで煮ていきますが、野菜からもアクが出ますので
取り除きます。全部が煮えましたら醤油、酒、味醂で味を調えて、水溶き片栗粉で
とろみをつけます。
これがおくずかけ(すっぽこ汁)です。薬味に茗荷や大葉の千切りなどを入れることもありますが、今日は生姜汁を少々加えました。
おくずかけに付き物なのが白石温麺です。素麺や冷や麦でも美味しいのですが、やはり宮城の郷土料理ですから温麺に拘りたいですね。おくずかけは上記のように簡単に作れますが、温麺は県外でも下記の楽天でお買い求めできます。
お盆が過ぎると、早くも秋の気配が漂い始めます。あれほど苦しめられた今年の夏ですが、峠を過ぎたかと思うとちと淋しく感じます。夏の後半を思う存分楽しんでおきましょう。
県外の皆様はこちらで白石温麺をお求めになれます。
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