唐墨(からすみ)作りに挑戦しました
カテゴリー: 料理:買い魚
日本の三大珍味と言いますと、江戸時代に天下の三珍と讃えられたのが「長崎野母の唐墨(からすみ) 」「越前の海胆(うに)」「三河の海鼠腸(このわた) 」だったそうです。冷凍冷蔵技術のなかった時代では、江戸に集まる珍味ももっぱら塩蔵品や発酵食品だったようですが、この三大珍味は現在でも継承されていますね。
江戸っ子絶賛の珍味中の珍味、長崎のからすみはボラの卵巣を塩蔵乾燥させたものです。ボラは冬になると集団で南下して産卵しますが長崎沖のボラは卵巣の熟し具合がからすみに最適と聞いたことがあります。からすみは台湾でも作られていますが、台湾産は成熟が進んで卵粒も大きくざらついた感じがするらしいです。
台湾でからすみを買ったのはもう二昔も前のことなので、品質はよく覚えていませんが、日本より格段に安く、一腹2000円位だったので、お土産用にたくさん仕入れたものでした。日本人がからすみ好きなのをよくわかっていて、お土産物屋ではしきりに薦められました。台湾ではからすみに烏魚子(オ−ヒーチー)の漢字を当てております。からすみは日本には江戸時代初期に中国から伝わったとされていますが、台湾の烏魚子は戦時下に日本の影響を受けて、からすみのからすに烏の字を当てたのでしょうか。
ところで、からすみはイタリアでも食べられていました。イタリアのサルディニア島に滞在していた時に学生時代からの友人であるイタリア人がからすみのパスタをご馳走してくれました。あちらではBottarga(ボッタルガ)と言って、惜しげもなくおろし金ですり下ろしてパスタに混ぜていました。何の卵かと尋ねるとボラ Mugil cephalusであると言うことでした。これは日本のボラと同一の学名であり、地中海にも日本と同じボラがいることに驚いた記憶があります。ボラはコスモポリタンだったんですね。
からすみは日本では長崎以外でも作られており、ボラだけではなく、実はサワラやマダイの卵巣でもできるそうです。前置きが長くなりすぎましたが、本日、魚屋さんで鮮度の良い天然ブリの卵巣が一腹200円で売っていましたので、これでからすみづくりに挑戦してみることにしました。
ぷりぷりの天然ブリの卵巣です。このまま、炊いても美味そうです。

からすみの作り方も色々調べて見たのですが、一様ではありません。総合すると、血抜き・掃除→塩漬け(1週間)→脱塩(半日)→酒漬け(1週間)→形成・天日風乾(1週間)となり、全工程を経ると3週間くらいになります。
卵巣の周囲には卵に栄養や酸素を送るために、血管が張り巡らされています。完成した時にこの血管が残っていると見てくれが悪いので、血抜きをするのですが、これがとんでもなく面倒です。血管の所々に爪楊枝で穴を開け、水中で血を押し出していくのですが、卵膜まで突き刺してしまいますと、中から卵が飛び出してきます。
血抜きの大変さに根負けしてしまいました。どうせ売り物じゃないし、皮は剥いて食べればいいんだし、、、とかなんとか理由を付けて諦めました。 まずは塩をたっぷりまぶして、冷蔵で眠らせます。

途中で生臭い水が溜まってきますので、何回か捨てて、1週間経ちますとかなりペッタンコになってからすみっぽくなってきます。
塩蔵の後は適度に塩分を抜きますが、その加減は味見をしないとわかりません。でも、一腹しかないので勘に頼ります。
燻製作りで養った感覚から、流水なら2時間程度、止水なら半日くらいと踏みましたが、こればかりは出来上がりを食べてみないとわかりません。今回は水を何回か交換しながら半日水に浸けておきました。
脱塩の後は、日本酒に漬け込みます。この工程は必ずしも必須ではないようですが、なんとなく美味しくなるような気がしますのでやってみます。
日本酒はからすみの肩くらいまで注ぎ、上をキッチンペーパーで覆って上部にも酒が回るようにします。この状態でまた、1週間冷蔵庫で寝てもらいます。途中、2回ほど天地返しを行いました。漬け込んだ酒が多少、塩っぱくなっていましたので、この工程でも脱塩が進行するようです。
日本酒漬けが終わると最終段階の形成と風乾です。左は乾し始め、右は1日経過したものですが、もう何となくそれらしくなってます。

本来、からすみはボラの産卵期の冬に作るようですが、ブリの卵巣なのでこの季節なってしまいました。気温も高く、外気に曝すのは不安がありますので、晴れた日だけ陽に当てて、夜間や雨の日は吸水性の良い紙に包んでから、板に挟んで形成しながら、冷蔵庫で保存するようにしました。紙の力による脱水効果も期待したわけです。
何とか3週間かけて、見てくれだけはそれらしくなった鰤のからすみです。
色、艶、質感はボラのからすみそのもの。問題は味です。
片方だけが綺麗になっていますが、もう一方は血走っています。^^
でも、あまり気にならないでしょ。薄切りにして食べればわからなくなります。
定法に従って、大根の薄切りと一緒に試食です。
軽く炙って薄切りにします。軽く焙ることで香ばしさも加わります。こう盛り付ければ、血走っていてもわかりませんね。ねっとりと濃厚な味はからすみそのものじゃありませんか!生臭さも酒に漬けたせいか微塵も感じません。やった〜! 自分でからすみ作ったど〜。
嬉しさ余ってもうワンショット。 
自分でもからすみが作れるんですね。やはり課題は脱塩の加減でしょう。あまり抜きすぎると腐敗が恐いし、塩が舌を刺すようでもからすみの美味しさがわからなくなります。こればかりは経験を積まないと駄目でしょう。それと、卵自体の熟し方も問題で、あまり成熟が進んでいると卵粒がしっかりしてくるので、ざらついた感じになってしまいます。けっこう手間もかかりますので、今度、何かの魚卵を見つけたら5腹分くらいまとめて作ってみたいと思います。
次の記事で懐かしの味、サルディニア島で食べたからすみのスパゲッティSpaghetti alla Bottargaを自家製からすみで作ってご紹介します。乞うご期待。


