みちのくの伝統菓子がんづきを考える
カテゴリー: 外食:居酒屋・割烹
昨日、石巻市河北の道の駅上品の郷で見つけたがんづきの一種、モサガンを前記事でご紹介しました。自然薯を使用した新しいがんづきなのですが、この名称は石巻周辺で以前からこのような蒸しパンタイプのがんづきに使われていたらしいのです(石巻ご出身のぱんださんによりますと、モサパンとも呼ぶらしいです)。
つまり、前記事で宮城のがんづきには2種類あると記していますが、モサガンのような黒砂糖を使った茶色い蒸しパンタイプと名古屋のういろうのような胡桃の乗った白いねっとりタイプが存在し、石巻地方では両者を区別して呼んでいたということです。私は子供の頃、夏休みは仙台で過ごしたのですが、広瀬川で遊んだり、市民プールで泳いだ後には大橋茶屋のがんづきを買って食べるのが楽しみでした。でも、仙台ではどちらもがんづきだったように記憶しています。
このがんづきは作り方も簡単で、古くからみちのくに普及しているので、土地ごとに様々な呼び名があるようです。山形から青森、岩手北部に分布するくじら餅も米の粉を使いますが、ねっとりタイプのがんづきと酷似します。さらに、白いのだけではなく、味噌や醤油を入れた茶色のくじら餅もありますね。何かがんづきの起源を探索してみたくなってきました。^^
さて、ここで簡単な調理実験をしてみます。主な材料は薄力粉と砂糖と水です。右の写真が加熱した後の状態です。

材料を全て混ぜ合わし、トロリとする糊状にします。二等分して一方にベーキングパウダーを加えてよく掻き混ぜます。どちらの写真も左の黒胡麻を振ったのがベーキングパウダー入りです。これらを耐熱容器に入れて電子レンジ(500w)で10分間チンします。チンする前後を並べていますが、これでは、なんだかよくわかりませんね。
容器から取りだして断面を見てみますと一目瞭然。
もっさりした蒸しパンタイプのがんづきとねっとりタイプのがんづきが出来上がっています。つまり、がんづきはねっとりタイプが原型であり、これに後にどぶろくや甘酒、自然薯を加えてフワフワ感を加えたのでしょう。酒饅頭や薯蕷饅頭は古くありますので、生地を膨らますこと自体は特に高度な技術とは思えません。ただ、重曹を使うようになったのは江戸時代末期のようで、これを使った饅頭を薬饅頭と呼んでいたそうです。とすると、自然薯を使ったモサガン(前記事)は新製品じゃなくて、先祖返りと言うことになりますね。
さて、プロトタイプの白い蒸しパンがんづきは、その後さらに改良が加えられ、味や色が多様になっていったようです。でもなぜ、現在の蒸しパンタイプは黒糖や醤油などが加わった茶色いのが主流なのかはわかりませんが、当初は両タイプとも白色、茶色とも、普通にあったのでしょう。さらに、ふわふわ感を増すために重曹が使われるようになってからは酢を加えることにより、酸アルカリ反応による炭酸ガスの発生も利用するようになっています。
さっそく、現在の方法で蒸しパンタイプのがんづきを作ってみました。

レシピは様々ありますが、卵1個を泡立て、粉にした黒砂糖50g、牛乳80ml、醤油小匙1、サラダ湯小匙1を混ぜ合わせます。これに薄力粉100gと重曹小匙1をよくふるって混ぜ、蒸す直前に酢を20mlを加えてよく撹拌します。泡がぶくぶく発生しますので、直ちに深めの皿にクッキングシートを敷いて生地を流し込み胡麻や胡桃をトッピングして強火で30分ほど蒸し上げます。
市販品と変わりないものが簡単に出来ました。
ただ、重曹を入れ過ぎますとどうしても苦味が生じてしまいますので、要注意です。醤油の塩っぱさと黒糖のコクのある甘味が融合して、実に味わい深い蒸しパンとなってます。 このように原型のがんづきに膨張剤を加えるだけで全くタイプの異なるがんづきが同じ調理法で出来上がるのですが、なぜ、仙台地方では蒸しパンタイプをモサガンとかモサパンとか別の呼び方をしなかったのでしょうか。それに、そもそもがんづきの意味は何なんでしょう。雁の肉と似ている?雁と月?観月から来た?・・・どれも今一信憑性に欠ける仮説ばかり。まだまだ、謎の多いがんづきではありますが、謎解きのロマンも感じますね。
現在のがんづきは両タイプとも牛乳を使っているようですが、かつては粉と水と砂糖、蒸しパンタイプはそれらをどぶろく、甘酒、自然薯で膨らませていたことでしょう。両タイプとも味や色の変化を楽しむために黒糖や味噌、醤油を加えたものと思われます。それはもっちりタイプに近いくじら餅のバリエーションを見ても頷けます。食の安全安心が問い正される現在、伝統的なみちのくの和菓子、がんづきも古来の製法に基づいたものを復古しても受けるのではないでしょうか。


